2013年03月07日
◎北の“逆ギレ反応”はまずミサイル発射か
4回目の核実験も視野に
焦点は逆ギレして休戦協定の「白紙化」を宣言した北朝鮮が、いかなる行動に出るかだ。例によって発言だけは勇ましい。010年の韓国延坪島砲撃で頭角を現した軍部強硬派の偵察総局長・金英徹が「ワシントンを火の海にする」とすごんでいる。今週中の国連安保理決議、来週初め11日からの米韓軍事演習と、国際社会の核実験に対する包囲網がひしひしと強まっている中で、北は単なる3流やくざのような威しをしているだけなのか、それとも何らかの軍事行動に出るのか。苦虫をかみ締めながらも国際社会は注視せざるを得ない情勢ではある。
威嚇声明の内容は「朝鮮戦争の休戦協定を白紙化する」とした上で「多様化された精密核攻撃手段で応じる」「任意の時期に任意の対象に、制限なく精密攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」「米国が核兵器を振り回せば、われわれは精密な核攻撃でソウルのみならずワシントンまで火の海にする」といった内容だ。「ソウルを火の海にする」と宣言し続けてて半世紀近くたつが、今度はそれを一挙にワシントンまで広げた。この国の“口撃”だけは、民族的特性なのであろう。とどまることを知らない。
しかし休戦協定の白紙化とは穏やかではない。1950年に勃発した朝鮮戦争は53年に北朝鮮軍、中国軍、国連軍の3者によって休戦協定が成立した。「白紙化」は国連決議に反対しない中国に対する“当てこすり”の意味もあるに違いない。現状はあくまで休戦であって、国際法上は戦争状態が継続している。いつまた戦争が再開してもおかしくない状況にあるのだ。たしかに「ソウルを火の海」にすることは可能だ。休戦ラインからソウルまではわずか57キロであり、通常兵器で十分届く。北は長距離砲500門を配備してをり、1分間に約3000発の砲弾をソウルに浴びせられると豪語している。注目すべきは中距離ミサイル・ノドンが、過去20年間に完全に実用化されて、照準を韓国と日本に合わせていることだ。核の小型化が完成すれば、これに核弾頭を登載して完璧な核ミサイルとなる。
一方長距離ミサイルは、昨年の実験で米国の西海岸までは届く飛行距離を達成した。しかし、ワシントンまでは届かない。だから「ワシントンを火の海」にすることはできない。核保有の独裁国家の特徴は、核ミサイルさえ保有すれば、超大国と対等になるという“一大錯覚”を持っていることだろう。しかし、たとえ核ミサイルを保有しても発射はできないことが分かっていないのだ。緊迫事態になればミサイル防御網が張り巡らされ、迎撃態勢が取られる。加えてミサイル基地への先制攻撃は確実に行われる。さらにピンポイントで金正恩を巡航ミサイルが狙い撃つ。一発でも核ミサイルが発射されれば、核ミサイルの報復で瞬時に北朝鮮全域が「火の海」となって、国家は消滅する。韓国参謀本部も6日「北が挑発を強行すれば拠点のみならず、指揮部隊にも報復を加える」と中枢への攻撃を警告している。
したがって刈り上げ頭のぼんぼんが、いくら力んでみても北朝鮮の核戦略はなり立たないのである。ぼんぼんはバスケットのスーパースターと仲良くしていればいいのだ。こうした中で採択される安保理決議案は、かってなく厳しいものとなる。焦点だった国連憲章第7章の適用が実現する方向となった。「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めている同章は、最終的には加盟国の軍事行動をも求めている。決議はまた船舶、貨物に関して国連加盟国が自国領内で検査をすることを求めており、これは「決定事項」となった。事実上戦時下における「臨検」に近い措置が取られる。核・弾道ミサイル計画に関係する金融取引や金融サービスの停止も義務化される。よく中国がのんだと思われるほどの決議だが、その中国は全く信用ならない。過去に国連決議があっても国境の鴨緑江にかかる唯一の鉄橋は、物資を運ぶ貨物列車やトラックがひっきりなしに行き来しており、今回もこの流れは止まるまい。
それでは国連決議と米韓軍事演習に対抗して北が何をできるかだが、4回目の核実験とミサイル実験があり得る。このうちまず先行するのは短距離か中距離のミサイル実験だろう。既に北は日本海と黄海に船舶の航行禁止区域を設定した模様である。北朝鮮はこれまでも、短距離ミサイル発射や海上射撃訓練の前に同区域を設定している。とりわけ注目されるのが昨年4月の軍事パレードで中国製移動用車両に搭載された最新兵器「KN−08」と呼ばれる新型ミサイルの実験が行われるかどうかだ。追加核実験は、実験準備は完了している模様だが
、立て続けの実験はあまりにも国際社会の反発が大きい。まずはミサイル発射か実験、海上射撃訓練などを先行させる可能性が高い。軍事演習の最中に延坪島砲撃のような行動に出れば、直ちに軍事的報復措置が取られる可能性が高く、北は避けるだろう。もっとも常識が通用する国ではないから、何をするか分からないところがある。
★俳句:春昼の垣根に二人寄りかかる